あともすラボ

第3回 原子力発電所の安全対策を知ろう!

① 福島第一原子力発電所の事故概要

新しい規制体制と規制基準

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、福島第一原子力発電所では、運転中の1~3号機が自動停止しました。この時4~6号機は定期検査で運転を停止していました。
事故の進展は次のとおりです。

①地震により、受電設備の損傷や送電鉄塔の倒壊が起こり、外部からの送電が受けられなくなった。
②想定される津波の最高水位を大幅に超える約13m(浸水高は約15m)の津波の襲来により大きな被害を受け、非常用ディーゼル発電機が停止するなど全交流電源が喪失した。
③これにより、原子炉への冷却用の水を送り込むことができなくなり、炉心冷却機能が失われた。
④1~3号機では原子炉内の水位が大きく低下、炉心損傷に至った。
⑤高温となった燃料を覆う金属が原子炉内の水蒸気と化学反応を起こして水素が発生した。
⑥発生した水素が原子炉建屋に漏えいした。
⑦水素爆発が起こり1・3号機の原子炉建屋が大きく損傷し、大気中へ多くの放射性物質が放出された。定期検査中の4号機の原子炉建屋も3号機から流入した水素によって爆発が起こり破損した。

② 福島の事故を教訓に安全対策を徹底強化

2011年3月、東北地方太平洋沖地震によって東京電力福島第一原子力発電所において放射性物質が大量に放出される大きな事故が発生しました。これを受け、国内の原子力事業者は原子力発電所の安全対策を強化してきました。
 2013年7月、原子力規制委員会が福島第一原子力発電所の事故を教訓に策定した新たな規制基準(新規制基準)が施行され、原子力事業者はさらに追加対策を実施しています。

■新規制基準のポイント

新しい規制体制と規制基準
福島の事故を教訓に安全対策を徹底強化
新しい規制体制と規制基準

A…地震や津波などに対する耐性強化の対策新規制基準では、原子力事業者に対し、あらためて発電所周辺にある断層や地下構造の調査・評価を行い、必要があれば発電所で想定される最大の地震動である基準地震動の見直しや、その地震動に耐えるよう耐震性の強化が行われています。
津波についても、あらためて海底の断層などの調査・評価を行い、発電所敷地で想定される最大の津波の高さである基準津波を設定し、この津波に対して安全上重要な機器の機能が確保されるよう、敷地の高さに応じて防潮堤・防潮壁の設置や扉の水密化などの対策が行われています。

B…長時間の電源が喪失することを防ぐための対策原子力発電所で事故が起こった際には、原子炉の冷却を継続するためや、原子炉や格納容器内へ水を入れるためなど、あらゆる場面で電源が必要となります。このため、原子力発電所では外部電源は独立した2ルート以上から確保することとなっています。また、非常用電気設備などの安全上重要な電源設備に対し、浸水対策も講ずるほか、非常用ディーゼル発電機が動かない事態が起きた場合のバックアップ対策として、電源車や常設の非常用発電機の整備が行われています。
また、原子炉内への注水を制御する際に使用する直流電源についても、長時間供給できるよう、バッテリーなどの整備も行われ、強化が図られています。

C…炉心損傷を防ぐための対策地震や津波などで複数の冷却機能が喪失することにより、炉心が損傷する事態を防ぐため、新規制基準では、多重かつ多様な冷却手段の確保が求められています。
原子炉内の水を冷却するために用いる海水を取り込む海水ポンプについては、バックアップとして大容量ポンプの整備が行われているほか、調達に時間のかかる海水ポンプのモータについては、予備のモータが確保されています。
また、水源については、貯水タンクのほか、貯水槽、ダム又は貯水池、海など多様化が図られています。

D…格納容器破損を防ぐための対策新規制基準では、核燃料が溶融するような炉心損傷が発生しても格納容器の破損や、水素爆発を防止し、環境への放射性物質の放出を十分低減させる対策が図られています。
たとえば、炉心損傷が起き溶融した核燃料が格納容器下部に落下した場合を想定し、格納容器下部を冷却するための水のラインを新たに設けるなど、強化が図られています。
また、格納容器内の圧力を下げる必要がある場合、格納容器内に溜まったガスを抜くためベント操作を行いますが、その際、放出ガスに含まれている放射性物質を低減して排気するため、「フィルタ・ベント」が整備されています。

E…放射性物質の拡散を抑制するための対策原子力発電所では核燃料や核燃料が核分裂することによって生まれた放射性物質が外へ出て行かないよう原子炉や格納容器、原子炉建屋によって閉じ込められています。また、炉心溶融により発生した水素が爆発し、放射性物質を閉じ込めている施設や建物に影響が出ないよう、新規制基準では、発生した水素を低減する「水素再結合装置」や、原子炉建屋の上部から水素を排気する設備などが整備されています。

F…バックアップのための対策新規制基準では、電源車などの可搬式設備に加え、テロによる故意の航空機衝突などを想定し、大規模な損壊により広範囲に設備が使えない事態に至っても、原子炉などを冷却できるバックアップ対策が求められています。
具体的には、原子炉を制御する中央制御室を代替する施設として緊急時制御室を整備することや、格納容器への注水機能、電源設備、通信連絡などのバックアップ対策として特定重大事故等対処施設の整備が求められています。

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本文の一部は原子力総合パンフレット(日本原子力文化財団発行)を出典としています。
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